第14章 【拾壱】岩&風&霞(鬼滅/最強最弱な隊士)
(あ……)
そのうなじがほんのり色付いている事に気付いた瞬間、素直な思慕の念を伝えた勇気の手応えを感じ、胸が擽ったくなる。真偽の程はまた後で確かめれば良い。悲鳴嶼曰く、刻を掛けて話が出来るそうだから。
(……)
虫が良い奴だと笑われたって構わない。己を鼓舞する目的で短い呼気を力強く吐き出し、頬を両側から挟み叩いて気合を入れる。悲鳴嶼の羽織を引き摺らないように端を掴むと、広い背中を駆け足で追った。
***
「遅せェんだよ、鈍間ァ」
「痛いっ」
鋭い痛みが額に入る。風柱殿が指で弾いてきたのだ。確かにちょっと悲鳴嶼と話し込んでしまったかもしれないけれど、まだ伊黒大兄と姐さんは戦略について相談しているし、片や蟲柱殿と水柱殿は脇腹を突き・突かれで戯れているではないか。
抗議する間もなく頚に風柱殿の太い腕が掛かって、無理やり抱き寄せられた。振り返ると、叢雲のように柔らかい自身の髪を乱暴に掻き上げながら舌打ちをした彼と視線が絡む。体重を掛けられると脇息にでもなったよう。身体休めたいのは今し方まで戦いに身を投じていた俺の方なんだけどな。
「汚れますよ、風柱殿」
「汚れ如きでぎゃあぎゃあ喚くガラに見えんのかよォ」
「いいえ、全く」
ぴしゃりと言い切ると、顳顬に四つ角を浮かべた彼に何故か頬を抓られた。本人の自己分析に同意を示しただけなのに酷い仕打ちである。まぁ雰囲気的に否定したって抓られたような気がしたから、返事自体が悪手だったのかもしれない。
「いひゃいれふ」
「うるせェ、黙ってろォ」
彼の風向きの悪さは今に始まった事ではないにしろ、先刻まで普通に会話出来ていたのにどうしたものか。この容易く暴力に訴える性質はマジで宜しくない。何らかの隊律に抵触していそうだが大丈夫だろうか。
まぁ出血するほど爪を立てられているわけでもなしに。別に息苦しくもないし、寧ろぴったり密着する彼の体温が悲鳴嶼の羽織越しに伝播して心地良いから構わないけれど……と、そこまで甘受して腑に落ちた。
(……そういうこと、か?)
今の状況、昨日のお返しとばかりに然り気なく人肌を分けてくれているという事か。打竹の存在と懐炉の応用を知る彼が、蟲柱殿へ譲る場面を目撃し、俺に温まる手段が無いと判断して行動に移してくれた、と。
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