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日章旗のデューズオフ

第14章 【拾壱】岩&風&霞(鬼滅/最強最弱な隊士)



着流しの裾を叩けば落ちる砂、汗で湿った頭髪に纏わり着く羽虫の残骸、胸腹の上で垂れ固まった血――意識すればするほど酷い風体の己に嫌気が差す。不本意な頭突きを喰らった際に案の定といったところで鼻血も出たらしく、人中を擦ると乾いた朱殷色の塊が剥がれ落ちた。
(……それに、眼も痛ぇ)
膂力の切れ間を見定める為、後輩達の猛攻を捌く為、瞬きは最低限に留めていたせいで眼球への負荷が高じている。流石にこの状態では『見て仕込む』空蝉への影響が出てしまいそうだった。
(……)
素早く動けばそのぶん、身体と接触する物体の速度と其れに付随する脅威は当然の事ながら増していく。風に混ざった砂埃の微細な粒子が、風速の倍の圧力でもって眼球という臓器を傷付ける事になるのだ。そうなってしまえば視力が危ぶまれるは必定。俺の眼はその一歩手前の段階まで来ていた。
万が一に失明したとしても呼吸で再生出来るとはいえ、利用した肉体組織を元の質量へ戻す為には莫大な刻と労力が要る。それなら今、顰蹙をかってでも我を通しておくべきだった。
「風柱殿、川行って良いですか。直ぐ済みます」
直ぐ横に立つ彼へ声を掛けると「清めんのか」と気怠い返事が有った。素直に頷いて「伊黒大兄達の準備が整うまでには終わります」と乞えば先程と同じ調子で促されたので、彼の気が変わらないうちに行動した。
「ありがとうございます」
「あいよォ」
中型背嚢に二枚の三尺手拭いが有る事を確認しつつ浅瀬へ向かう。日輪刀は早々に足元へ落とし、羽織は乾いた砂利へ放り投げて濡れない様に避難させておく。着流しは身に纏ったままで良い。適当に端折りを施せば事足りる。準備が整ったら、複数人分の突き刺さる視線を背負いながら白浪を立てた。
(さっさと済ませよう)
一枚目の手拭いを引き摺り出して川に浸し、充分に冷水を含ませたら直ぐに引き上げて頭に被せた。それを幾度か繰り返して髪を洗い流す。髪が終われば顔、顔が終われば頚といった具合に、胸、腹、腕、脚と上から順次清めていく。
最後に、掬水へ眼窩を沈み込ませて眼瞼の内側を洗浄すれば終わりだ。瞬きの度に独特の青みを帯びた流水文様が視界の端を漂うので、瞳の色を変えていた特殊な薬液が溶け出している事を悟る。きっと髪の色も落ちてしまった。でも天元とは一応和解したし、見た目を気にする必要はもう無いだろう。

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