第27章 小さな太陽と大きな背中
~澤村side~
最後の1点がかかったサーブに気遅れする山口を見て。
おいおい、さっきの勢いはどこに行ったんだ?と思いながら、かける言葉を探していると紡がおまじないをかけてあげると言い出した。
青城との練習試合の時、コートにいた俺達にもやってくれたっけなぁ。
あれはなかなかちょっと嬉しかったよな。
ちょっと?
いや、結構嬉しかった···かな?
あ、いや今はそれはどっちでもいいだろ。
女の子にギュッとされてラッキーだったみたいな、ラッキースケベみたいな、そんな軽い感じじゃないぞ!
違うぞ!大丈夫か俺!
頭の中の邪な気持ちを追いやりながら、おまじないをかけられる山口を見れば、ぎこちなく固まっている。
『・・・どう?ドキドキは治ってきた?』
山「き、緊張のドキドキは治まったけど…なんだか違うドキドキ感が走り出しそうだよ···」
紡の言葉にポソッと呟く山口に、縁下と同時にが吹き出してしまう。
縁「山口、その気持ち凄い分かるよ」
「確かに緊張は解けるかもだけど、心拍数は上がるよな」
緊張は解けるだろうけど、そうだよなぁ、違うドキドキは急速にやってくるよなぁ。
俺もそうだったし、平静を装うのも大変だったよ。
『あの、大地さん?お願いがあるんですけど···』
笑い出した俺達を見て、紡が何か難しい顔をしながら俺を見る。
「ん?なに?」
『ちょっとだけ、私をギュッてして貰えませんか?』
え···はぁっ?!
「急に何言ってるんだ?!」
『ちょっと確かめたい事があって』
今ここで俺が紡をギュッとして確かめたい事ってなに?!
「そう言われても、だな···」
『そこを何とか···ね?』
動揺を隠しながら、やんわりと言ってみれば更にお願いをされてしまう。
そこを何とかって、サラリーマンじゃないんだからさ。
ね?って···ね?じゃないって!
一歩前に進んで来る紡に、思わず一歩下がる。
縁「城戸さん、大地さんの変わりに俺がそれやってあげてもいいよ?」
縁下?!
『う~ん···でも、大地さんじゃないとダメなんです』
俺じゃないとダメ?!
これは···アレだな。
冥利に尽きる?っていうか。
まぁその、なんだ···本人が希望してるワケだし?
···俺じゃなきゃダメだって、言ってる、し?
「···わかった」