第25章 追憶
『武田先生、私、浜辺にいたんです』
武「浜辺、ですか?」
・・・浜辺?
どういう事だ?
急におかしな話を始める紡に、耳を傾けた。
『はい・・・そこには、よく分からないけど小さい時の私がいて。桜太にぃもいて。でも、公園にもいたんです』
武「そこには、城戸さんの他にも誰かいましたか?」
『えっと・・・確か・・・私の他にも、中学生の私がいて・・・あと、ハジメ先輩がいて・・・』
及「岩ちゃんが?」
・・・俺?
紡の言葉に、及川が俺に視線を送って来る。
『はい・・・でも、なぜか・・・よく思い出せないけど、悲しくて、なんだろう。えっと、う~ん・・・』
中学生の・・・紡、と・・・俺・・・?
それに公園・・・だと・・・?
紡が少しずつ思い出しながら話す内容は・・・断片的な、過去の・・・記憶・・・か?
「無理に・・・無理に思い出さなくてもいい。忘れたままで、いいから」
紡に歩み寄り、そっと頭を撫でる。
「コーチ、外の様子見て来ます。車が来たら、すぐ分かるように・・・矢巾、お前も来い」
矢「え?あ、はい!」
思い出せないなら・・・思い出さなくてもいい。
そのままで、いい。
俺の事も、忘れてもいいから・・・
お前は前を向いて、進み続けろ。
・・・振り返るなよ、もう。
俺が最後にしてやれる事は。
紡。
お前のその小さな背中を、押してやる事だけだ・・・