第17章 陽だまり
自分の行動を棚に上げながら、隣に並んで靴を出す慧太にぃに突っかかる。
慧「別に見張ってた訳じゃないんだから、いいだろ?支度して降りようとしたら、紡が勝手にソロソロと歩いてたのが見えたんだから。で?どうして紡は、そんなにコッソリ行動していたのかな?」
『あ、あはは・・・』
慧「ん?」
『いや、何か、その。出掛けるところをからかわれたりすると・・・なぁ・・・なんて・・・』
慧「お前ヒドイなー。オレの事をそんな風に思ってんのかよ?」
普段の行動から仕方ないじゃん!と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
『まぁ、そのですね・・・行ってきます?』
慧「なんで疑問形なんだよ」
『だって、慧太にぃもこれから仕事行くんでしょ?だから、行ってきますと行ってらっしゃいで迷っちゃった』
慧「アホ。そういう時は行ってきますでいいんだよ」
並んで靴を履き、お互いに立ち上がる。
慧「忘れもんはないか?」
そう聞かれ、手元のリュックの中身を思い浮かべる。
『ん、大丈夫だよ』
そう返すと慧太にぃは少し残念そうな顔で私を見た。
慧「あるだろ?」
えっ?ないよ?と言おうとして慧太にぃに見ると、どういう訳か両手を広げてニコニコしている。
『え・・・なにそれ?』
慧「今日は桜太がいないから、代理。ほれ、早く来い、遅れるぞ?」
『いやいやいや・・・普段から桜太にぃ、そんな事してないから。何なの今日はホントに』
そう返して、リュックを背負おうとした。
慧「はい、捕まえたぁ」
そう言いながら慧太にぃが、半ば強制的に抱きしめてくる。
『ちょっと!妹にセクハラ行為するつもり?』
あまり力が入っていない腕を解こうと、両手をバタバタとさせてみる。
すると慧太にぃは私の頭に顎を乗せた。
慧「ばーか。妹にだからこそ、無条件で出来る事だろ」
その言葉に、思わず動きが止まる。
慧「紡が今日1日、元気いっぱいに過ごせるおまじないだ」
そう言って、もう1度私を抱きしめると、背中をポンポンと叩いた。
その行動に、ふと、小さい頃を思い出した。
縄跳びが飛べるように、かけっこで早く走れるように、逆上がりが出来るように・・・
“ いいか紡、兄ちゃんがおまじないをかけてやる。だから思いっきりやってみろ ”
あの頃も今も、慧太にぃは変わらないんだね。
思わずクスクスと笑い出す。
