第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
いつ何時、海賊と遭遇してもいいように、大砲には常に砲弾が装填されている。
訓練で習った操縦法を思い出しながら、大砲の矛先を船尾に向けた。
すでに他の者に気づかれてもおかしくないほどの騒音が出ているはずだが、まったくの無音。
これがロシナンテの能力の恐ろしいところだった。
「5、4、3・・・」
操作レバーを握りしめ、誰に聞かせるでもないカウントダウンを口にする。
1秒ごとにそれで気持ちを静めていった。
「2・・・1・・・」
落ち着け。
チャンスは一度きりだ、ドジるなよ。
「ゼロ・・・!」
照準が定まっている事を確認してから、目を閉じて発射スイッチを押す。
その瞬間、砲口から黒い煙と炎が飛び出し、艦砲が軋んだ。
・・・シン・・・
轟くはずの爆音はなく、火薬の強い匂いが辺りに立ち込めるだけ。
恐ろしいほどの静けさの直後、船が大きく揺らいだ。
それは確かに砲弾が船の甲板を貫いた証。
グラリ・・・
順調だった航海だ、高波もないのに船が傾く事など誰も予想していなかっただろう。
突然の異常事態に、船員達は潮の流れが変わったと思ったのか、慌てて外に出てきた。
だが、そんな悠長なことを言ってられる事態ではないことを、甲板の上を覆いつくしている黒煙によって気づく。
「何が起こってる!! 状況を確認しろ!!」
「船尾の方から火が上がっているようです!」
「火事・・・?! 敵襲か!?」
まさに“寝耳に水”とはこの事。
誰もが事態を把握できず、船内は混乱状態となっていた。