第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「君はちゃんと“娼婦”だと名乗ってくれたのに、おれは“海賊”だと名乗らなかった」
本当にごめん、と優しい顔で謝るサンジ。
クレイオにとってはそんなこと、どうでも良かった。
海賊だろうとなんだろうと、顔を殴り、酷いことを言ったのは自分だ。
助けてくれた安堵と、申し訳なさとが同時に込み上げ、涙が止まらなくなる。
「クレイオちゃんっ! ごめん、怖かったよな! もっと早く助けに来るべきだった!」
「違う・・・! 謝らなければいけないのは私の方だよ」
「え・・・?」
「もう二度と私に関わらないで、なんて言ってごめんなさい・・・!」
するとサンジは、漁師の上でピタリと止めていた足を下ろし、クレイオの所に歩み寄る。
そして、スーツのジャケットを脱ぐと、裸の身体にかけてくれた。
「女の言葉は、それがウソだろうが真実だろうが、全て許すのが男だ」
だから気にしないで、と微笑む。
「クレイオちゃん、この男をどうして欲しい?」
「え・・・?」
「頭を砕いて欲しいかい? それとも二度と女が抱けない体にしようか?」
魚をさばく程度のことのように言っているが、それが冗談でないことは、先ほどの剣幕を見れば分かる。
クレイオはサンジの腕を掴むと、首を横に振った。
「サンジ、お願い・・・この人には何もしなくていい」
どんな形であっても、目の前で“暴力”は起こって欲しくない。
元はといえば、この漁師の性欲を鎮めてやることができなかった、自分が悪いのだから・・・
「その代わり、私を外に連れて行って欲しい・・・」
どうか、無様に床で倒れている漁師をこれ以上傷つけないで。
「本物の・・・太陽が見たい・・・」
強姦されかけたにも関わらず、クレイオは男を許そうとしていた。
その健気な思いが、サンジの怒りを鎮める。
「ああ、分かった」
海賊は優しく頷くと、まるで壊れ物を扱うように娼婦を抱き上げた。