第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
ガンっ!って音が響いた。
その次の瞬間ににゃーってひっくい声がする。
「....イタイ」
どうやら目的地付近には着いたみたい。
多分だけど...。
なんせ目の前に見えるのは、白い白い扉と銀色の中から開けられる鍵だ。
尻がヒリヒリするんだけど、もうちょっと移動を優しくして欲しかった。
ヒリヒリする尻から伝わるのは、ひんやりとした感触。
そう、生きてりゃ誰でも1回以上は確実に座る場所の上にオレは送られた。
どうやらここは便器の上らしい。
ひんやりした冷たい感覚が徐々にあったくなるのを感じつつ、ふーっとため息をこぼす。
....尻を労わって欲しかった。
トイレの個室に着地したせいなのか、オレの尻に何かしらの怨みがあるのかわかんないけど、おもいっきり尻を強打した。
トイレには神様が住んでるって歌が流行ったよね。
ヒヒッ、トイレに紙もあったもんじゃない。
実際に紙キレてるし、ここのトイレ...。
紙袋を抱えたままオレは便器からすっと立ち上がった。あんまり便座に座っていると痔になるって聞いたことあるし、痔にはなりたくない。
でもこれが最悪な事に...。
「...あっ」
便座を立った瞬間にぼちゃんと嫌な音が聞こえた。その音に反応してばっとマントを上へたくしあげたが、時すでに遅かった。
「マントが...」
水浸しになった。
なんの水でかは、もうあえて言わないけど...。
水浸しになった...。
「ざけてんじゃねーぞ!!クソが!あークソって思い出したらクソ松思い出した!あいつマジで殺す!」
紙袋の中からひっくい声の罵詈雑言が流れ出す、なんか虚しいんだけど....。
どうやらなにかしらの弾みで、紙袋の中にエスパーニャンコが上手いこと入ったみたい。
まぁでも、マント汚れてもおそ松兄さんから受け取った紙袋に服入ってるって言ってたし、問題ないか。
そう思って紙袋を覗き込んだ。
「「....なにコレ」」
たった一言、そう、その一言が同時に二回、小さなトイレの個室に響いた。