第17章 代償(R18:孤爪研磨)
ケーシージャケットのポケットから取りだしたるは、飴玉ふたつ。カサコソころん。りんご味のそれである。
ちなみに本来子供用。
もっと言えば、駄々っ子用。
長すぎる待ち時間に辟易としてソファでトランポリンをし、廊下で大運動会、果てはママたちを泣かせてしまう困ったさん用の頓服薬である。
「ぼくたち何歳?」
「飴はもう食べれるかな?」
にっこりと笑みを携えて、押し問答を続ける「ぼくたち」に飴玉を差しだした。
病院では静かにしようね。
そんな言葉を付け加えて。
「くろおてつろう17さいです。ぼくはあめよりもおさかなさんがすきです。でもおねーさんのことはもっ」
「下らない芝居はいいから、早くお会計して薬局に行きなさい。お友達の彼が待ってるでしょう?」
下らないとか傷つくわー。
そうごちている黒尾くんに飴玉ひとつ。そんな黒尾くんを冷ややかな目で見ている少年にも、飴玉ひとつ。
それぞれの手に無理くり握らせて、私は今度こそ仕事に戻ることにした。
「あなたにはもう一個あげる」
「……え、なんで、おれなの」
プリンになったミドルボブ。
小麦畑に似た、黄金色。
子猫のような瞳でこちらを見つめる彼に、私は、ふわりとした笑みを見せてこう言った。
「友達思いの、いい子だから」
その言葉を残して踵を返した私。楽しい時間はおしまい。さてオシゴトに戻りましょう。
しかし私の背後では──
「おや? おやおや?」
「いや、違うから全然」
「そうかそうか、研磨お前、俺を心配して迎」「だから違うって言ってるじゃんクロウザい嫌い」
そんな彼らの痴話喧嘩がいつまでも、鳴り止まずに廊下を満たすのであった。