第53章 original~魂葬篇~
「他の死神なら、大抵問答無用で魂葬ですからね。」
「貴方でよかった。ありがとう。お返し何も出来ないけれど……」
「あぁ、じゃああちらで出会ったらお礼してください。」
「勿論よ。」
「じゃあ行きますか?」
「ごめんね、最後に本当に最後に」
リビングに向かうと修ちゃんを抱き上げた。
「ママ、行っちゃうの?」
「うん、行ってくるね。」
「気をつけてね。」
「うん、ありがとう。」
修ちゃんの頬に口付けをする。修ちゃんはお返しと言ってお母さんの頬に口付けをした。
ゆっくりとお父さんに近づいて耳元で『パパ』と叫んだ。
「……え?!え、え、いま、」
いつの間にか腕の中にいる修ちゃんに驚くこともなく、辺りを見渡す。
「ママいるよ。ここにいるよ。」
「いるのか、いるのか?陽子、いるのか?」
「ママがね、バイバイだって。」
「そんな……ダメだよ……俺、お前がいなきゃ……」
「ママ、怒ってるよ、しっかりしてって。」
「……ありがとうな、陽子、俺の妻になってくれて……宝物を授けてくれて……お前との結婚生活5年、本当に楽しかった……仕事ばっかりでなんもしてやれなかったけれど、これから修には寂しい思いをさせないように精一杯育てるから。だから、安心してくれ。ありがとう。会いに来てくれて。ありがとう。」
数日後
「あんさ、山岡さん、今朝息子さんを保育園に連れてってるの見たわ。スーツやったし、仕事復帰したんやと思う。なんかお弁当もしっかり持たせてたから、きっと乗り越えようとしてるんかな、って。」
七海の言葉を聞いてほっとした。
もし、陽子さんに出会うことがあれば、このこと伝えてあげようと思う。
私は人間だ。生きている。
だからこそ、現世に迷える魂を最善の形で導きたい。
多少厄介でもこの作業は事務的な処理では済ませたくはないのだ。