第32章 過去編 ~序~
気付けば見知らぬ場所にいた
私は確か、父や母、兄弟、乳母や侍女達に看取られて、幼くして病で死んだ。
それ以外の記憶はあまり無い。
親より先に死ぬことって悪いことだと思ってた。
きっと地獄に送られる。
でもここは地獄ではない。
しかし天国でもない。
死んだのに、生きている感覚
いや、この世界でここの人たちは生きてるんだ。
死後の世界 ―尸魂界
「死んだのに不思議な感覚だろ。すぐ慣れる、お前は、年長の俺と、そこにいる二人の兄と、この屋根の下で暮らすことになる。家族ごっこってやつだ。あっちにいた頃の年齢覚えてるか」
「年が明けたら5つ」
「自分の面倒は自分で見ろ。お前は女なんだし、多少の家事でもしてくれるんなら、俺のお零れにありつけてやるさ。とは言え、腹も空かねえこの体じゃ、娯楽なんて博打くらいだけどな」
腹も空かない……
いや、私は空腹だ。
特に食事は嗜好品のため、食料を売ってるような店が多いわけでも畑が多いわけでもない。
山に行っては木の実を食べるが、それで腹の足しにはならない。
家の奥で空腹に耐え忍んでいる
「なんだ、お前、腹減ってんのかよ。」
「……はい。」
「霊力持ちの女の子どもじゃただの穀潰しじゃねえか」
私は厄介者扱いされた
「悪いがお前を食わしてやれねえわ、ま、お前にとっても俺にとっても利のあるような所に連れてってやる。」
「利?」
「女でも働けて、衣食住にありつける仕事だ」
それは私にとってはまるで天国のような話だった。
「この娘だったら相場より多く出してやろう。」
「本当かよ?これで暫くは遊んでくらせる。あいつの容姿に感謝だな!!へへっ」
「おいおい、秘密裏でこの商売やってんだ、大声にはするなよ。」
「だけど実際は死神だって利用するんだろ?」
「あの世でも欲は溜まるみたいで」
私はこの男に売られたらしい
それから家を離れて男や同じように売られた女の子達と歩いた。空腹で力がでない、山道も歩けないほどだった。
「山降りたら、一地区だ。そこで食いモン調達してやるからとりあえず歩け。」
私は手を引かれて歩いた。
すると……
「グォォォ」
山に響く謎の声
「ホ、虚だぁ!!!」
「食われるぞ!!!!」
山道に現れた異形のもの。皆が散り散りになる中で私は腰が抜けてしまった。