第11章 鬼さん、こちら。✔
「そんな奴が鬼殺隊を名乗るんじゃねェ。とっととこの土地から消え失せろォ」
「っ…でもオレは」
「柱に口応えする気かァ? 剣士の成り損ないがァ」
「ッ…」
二人の問題は、兄弟間の問題。
そこに部外者が突っ込んじゃいけないのはわかってる。
「出ていけ。此処はテメェみたいな用無しがうろついていい場所じゃねェんだよ」
わかってるけど。
「…手、放してよ」
「あ?」
肩を掴む不死川の手を、上から握る。
そこに湧き上がる感情のまま力を込めれば、びきりと骨が軋む音がした。
「ッ…テメ、」
「私の監視ならもう用は済んだでしょ。普通に話ができないなら、すみちゃん達が怖がる。そっちが蝶屋敷から出てって」
びきびきと不死川の腕に太い血管が浮かぶ。
だけど力勝負なら悪いけど、負ける気はしない。
…知らない癖に。
玄弥くんが理屈じゃどうにもならない自分の才への現状を突き付けられて、尚あんたを諦めなかったこと。
鬼を喰らう禁忌を犯してまで、あんただけの為に進む道を選んだこと。
何も、知らない癖に。
「できないなら私が追い出す」
ざわりと肌が感情と同様に粟立つ。
「は…ッ鬼の台詞じゃねェだろ」
「ならそっちも柱らしくして。人間は守るべきものでしょ」
そこに殺気を向けてどうするの。
「ほ、蛍さんっあたしたちは大丈夫ですっ」
「不死川さまは、あたしたちに乱暴しないの、わかってますから…っ」
「だから落ち着いて、ください…っ」
その場の殺気に足は竦んでいるものの、懸命に伝えてくるすみちゃん達に、気付く。
体を震わせながら彼女達が見ていたのは不死川じゃなく──私の、足元。
影。
ざわざわと粟立つ気配で水の波紋を広げるように大きく膨らむ真っ黒な影が、不死川に向かって牙を向いていた。
杏寿郎と手合わせした時は、蛇のような形をしていた。
だけど今は継ぎ接ぎだらけの牙と複数の手足を伸ばす、歪な昆虫のような。
何にも形容し難い、おぞましい姿。
「怖がらせてんのはどっちだ糞鬼がァ」