第32章 夜もすがら 契りしことを 忘れずは
「ただその後は、俺の相手をしてくれないか」
「また、するの…?」
「ここも大層心地良かったが、俺が一番入りたいところにはまだ触れてもいない」
「…ぁ…」
むにりと桃尻を柔く掴んで、その奥底に本来ならある蜜壺を求める。
今の男の身体にはないもの。
本来の蛍の身体にしかないものに、力の入りきれいていない顔がのろのろと上がる。
「女に…戻っても、いいの?」
辿々しい問いかけなのは、まだ本調子を取り戻していないからだろう。
しかしその従順な言葉も重なって、杏寿郎の体の奥底がかっと熱く灯った。
「蛍…君は…」
「?」
「…いや」
蛍の擬態能力が他の鬼より高いのは明らかだ。
だからこそ吸血木に巻き込まれ飲み込まれた後も、擬態を維持し続けて男の姿のままでいた。
恐らくきっと今もそうだ。
ぎこちない反応に変わる程、快楽に染まった身体は疲弊しているはず。
それでも律義に擬態を取り続けているのは、杏寿郎がそのままの姿でいるようにと命じたからこそ。
(本当に、君は)
杏寿郎の言葉なら聞くと、以前にも言ってくれた。
どんなに激しい責め立てをされても、無理矢理に体の奥底を犯されても、それでも拘束された縄を解かずに身を任せていたのだから。
いじらしい程に、懸命に、心身共に想いを向けてくる。
その蛍なりの愛の形をまざまざと見せつけられた気がして、参ったと抱く腕に力を込めた。
「っ杏、寿郎…?」
「蛍…好きだ」
「ん…っ」
「愛してる」
「は…っ杏…」
緩む唇を目の前のそれに押し付ける。
感情が昂るままに唇を重ね、想いを告げては愛撫を届けた。
いつもより反応の薄い柔からな舌を、丹念に己の舌で撫でていく。
その口内から零れ落ちる唾液一滴でさえも愛おしい。
何一つ取り零さないようにと飲み込みながら、柔からな桃尻をゆっくりと揉みしだいた。
「ふ、ぁ…っそれ、零れる、から…っ」
「そうか。それは困るな」
「だから手を離し…っ?」
ひくりと震える小さな蕾。
そこから杏寿郎の精が溢れる前にと、辿り着いた中指がつぷりと潜り込んだ。