第29章 あたら夜《弐》
優しく摘まみ、温めるように指先で擦り摩擦を起こす。
次第に硬くなる愛らしい主張に、その形を確かめるように爪先で掻き撫でる。
「ンんッふぁ…っ」
分厚い襟巻で胸元は見えていない。
しかしその度に蛍の体はぴくぴくと小刻みに跳ね、唇の隙間から甘い声が零れた。
「そこ、は…ッひうッ」
「君の善いところだ」
胸が弱いことは知っている。
本来ならこの分厚い着物を剥ぎ取って、剥き出しの果実のような乳房に貪りつきたい。
それができないならと、目に見えない小さな胸の芽にだけ集中した。
丹念に、丁寧に。見えないからこそ反応を細かに拾い上げながら、指先の感覚で愛撫を重ねていく。
摘み、擦り、捻り、弾く。
弄る胸の中が水気とは違う湿り気を感じさせた頃。
「は…ぁっ!」
ぎゅっと充血して硬くなった芽を強めに摘まめば、軽く仰け反るまでに蛍の反応は良くなった。
「気持ちいいな、蛍」
「あ…ッぅ…っか…」
「うん?」
「そっち、ばっかり…いじめない、で」
執拗に責め立てられているのは左の胸ばかり。
爪を立てられればびりびりと刺激を感じる程なのに、隣の乳房には何一つ刺激がない。
物足りなさが、痒みを感じるような疼きを生む。
「こっち、も」
「だが片手は蛍の支えに使っているしな…」
「…っ」
支えなど、回転の速い杏寿郎の頭なら幾らでも他の方法を思い付くはずだ。
それがわかっているから、何か言いたげな唇をきゅっと噛み締めて蛍は切なげに眉を顰めた。
苛めないで欲しい。
そんな声が聞こえてくるようだ。
快楽を求めて、いつもより素直になる蛍の挙動。
それが見たいが為に頑固になり過ぎたと、杏寿郎は砕けた笑みを向けた。
「ああ、手は足りないが別のものがあった」
胸へと埋め込んでいた手を引き抜く。
それと同時に分厚い壁となっていた襟巻を抜き取り、掛け襟をぐいと引き下げた。
「っえ…」
「これなら、もうひとつも可愛がってやれる」
呆気なく外気に晒された右の乳房が、杏寿郎の視界を埋める。
突然のことに蛍の覚悟がついてこないまま、疼きにより硬く上を向く胸の芽に杏寿郎は食らい付いていた。