第28章 あたら夜《壱》
「最終選別も一緒だったのに、あっという間に階級追い抜かれて遠い存在になったんだよ。なぁ」
「遠い存在とか言うな!」
「え、じゃあ村田さん義勇さんと仲良いんですか?」
「仲…は……」
「喋ってるところ見たことないな」
「おい野口ッ」
「本当のことだろ? すれ違っても目が合っても無視されるんだってさ。村田のこと眼中にないんだろうなぁ。水柱様、柱の中でも周りに一線引いてるって聞くし」
「それは…」
確かに、野口の言うことは一理ある。
思い当たる節があるからこそ、蛍は皆まで言わずに黙り込んだ。
肯定はしたくないが、義勇が周りに一線引いているのは確かだ。
(でも目を合わせれば、向き合ってくれた。声をかければ、言葉を交えてくれた。冷たい訳じゃないと思うけどな…)
少し人より言葉が足りない。
蛍にとって義勇はそんな人間に見えていた。
「いいんだ。どうせオレのことなんて憶えてないんだろ。最終選別だって、結果を残せて剣士になれた訳じゃないし…」
「そうなんですか?」
最終選別は、見習いである剣士候補生達が、鬼の住まう山で受ける最終試験。
其処で鬼退治をしながら七日間生き残ること。
それが達成できた者だけが、晴れて鬼殺隊の剣士となれるのだ。
「同じ最終選別を受けた錆兎(さびと)って奴がいたんだ。凄い剣の腕前で。そいつがほとんど鬼を退治してしまったから、オレでも生き残れた。運よく剣士になれただけさ」
「もうそう言うなよ村田。あの山で生き残ることが一番大事なことだろ」
「だからって一匹も鬼を倒せてないんだぞ? そんなオレが剣士だなんて…」
「…村田さんは鬼殺隊を辞めたいんですか?」
「それは…っ辞めないけど!」
不意に出た蛍の問いに、反発するように村田の声が抗う。
「折角掴んだ好機でもあるんだ。オレだって生半可な気持ちで剣士になった訳じゃない…! オレだって…!」
腰に差した刀を握る手に力がこもる。
力む余りに語尾が震えた。
はっと我に返った村田が顔を上げれば、やんわりと頬を緩めた蛍と目が合う。
「うん。なら、村田さんは大丈夫」