第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓
まるでその日の夕食を告げるかの如く、他愛のない話のように口にする。
理不尽に荒げた想いも、ぶつけた感情も、当然のように受け入れてすんなりと包み込んでくれる。
嗚呼、とつきそうになる溜息を呑み込んで、杏寿郎は眩しいものを見つめるように目を細めた。
鬼である蛍を継子として、また愛すべき対象として受け入れた杏寿郎に、驚愕や疑惑の目も向けられたが、鬼殺隊内では圧倒的に敬慕の目が多かった。
隊の中枢となる柱の一人であり、元より慕われていた杏寿郎のこと。それは当然の結果だったかもしれない。
それでも杏寿郎自身はそう感じてはいなかった。
流石は炎柱様だ、広い器をお持ちだと讃えられても、見るべきものはそこではないと知っていたからだ。
自分を死に至らしめた者を恨めど、そうさせた世界に悪意を向けることなく、無関係な人々を悪鬼から守ろうと立ち振る舞える。
同様に鬼にも目を向け、己の在り方を模索しながら手を握ろうとする。
罪人とも言える扱いを何年も受けながら、処刑人ともなる柱達相手に等身大で向き合おうとする。
尚且つ一度は斬首の為に見定めに来た男に心と体を許し、全てを受け入れた。
そんな彩千代蛍という名の鬼にこそ、目を向けるべきだと。
(これだから…適わないと、思うんだ)
鬼と成り堕ちながら、悪とは何か。自分がすべきことは何か。
手探りながらも〝人〟としての道を歩もうとしている彼女は、また同じ人としての自分に限りない愛で応えてくれる。
それでも蛍が鬼である事実は変わらない。
悪鬼が蔓延る限り、蛍に向けられる負の目はなくなることはない。
立ち位置から既に違う彼女と自分とでは、比べられるはずもないのだ。