第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の
「ん…っ」
ひやりと背中に冷たい空気が触れる。
納屋の壁に両手をついたまま、蛍はその原因をちらりと振り返り見つめた。
背中の中央、背筋の谷に舌を這わせた杏寿郎が、ゆっくりと舐め上げている。
背中から腰にかけて作られたヴィーナスラインは、反り返る蛍の女性特有の柔らかな曲線を惹き立たせていた。
「やはり君の身体は一つ一つの線がとても綺麗だな…いつまでも見ていたい」
杏寿郎の手により易々と剥かれた寝間着の浴衣は、帯に辛うじて引っかかっているだけだ。
上半身を何も纏っていない状態で、蛍は恥ずかしそうに身を竦めた。
「見てる…だけ、なの…?」
羞恥に顔を赤らめながらも、ぽそりぽそりと問いかけてくる声は甘い響きを持つ。
ぞくりと腰にくる甘さに、杏寿郎は覆い被さるようにして蛍の耳元に囁いた。
「まさか。今すぐにだって君を抱きたい。君の中に──」
「…んっ」
くちゅり。
槇寿郎に借りた羽織は、丁寧に畳んで縁側へと置いてきた。
薄い浴衣一枚の蛍の足の付け根へと手を滑り込ませれば、温かな潤いに指先が触れる。
想像していたよりもずっと濡れそぼり待ち侘びていた蜜口に、杏寿郎は言葉を呑み込んだ。
しかしものを言いたげな目は、それを語っていたのか。流した視線を絡め合わせて、蛍は更に顔を赤らめた。
「わ…私も、気持ちよかったから…」
「……」
「私だって…杏寿郎が、欲しかった、の」
昇り詰める程の快楽を与えられたというのに、一番欲しいものは貰えていない。
此処が煉獄家でなければ、自分だって体を重ねたかったのだと。辿々しくも伝えてくる蛍に、耐えていた杏寿郎の理性は易々と断ち切られた。
「蛍…っ」
「んあッ」
だらりと腰にぶら下がっている浴衣を乱雑に託し上げる。
白い桃尻を掴んで腰を進めれば、熱い陰茎は予兆を感じさせることもなく蛍の中へ吞み込まれていった。
「ふ…っ」
吸い付くような狭くも柔い蜜壺の中は、やはり口内とは違う。
長い間待ち望んでいたものに、杏寿郎は耐えるように息を抜いた。
気を抜けばすぐにでも果ててしまいそうだ。