第9章 天からの贈り物
「で、水差すようで悪いんだけど蝶ちゃん。そろそろ夕方になるし、買いに行った方がよさそうじゃない?」
『あ、ほんとだ…じゃあそろそろ行くね、二人共。私フランシスさんからお使い頼まれてるの』
私の声にお使い?と聞き返す二人。
よほどフランシスさんからそんなイメージが湧いてこなかったのか、二人してプッと吹き出して笑いを堪える。
…まあ、気持ちは分かるよ。
私もあの人がまさかあんなに子供に優しい人だとは……いや、私は子供じゃないんだけど。
「お使いって何頼まれてるんだよ?」
『美味しい美味しいとっておきを頼まれてます。ショーケースにある分買い占めてってくれって言われたし、私も好きなやついっぱいもらう予定で…』
「「え、まだ入んの!?」」
見事にタイミングが重なる立原コンビ。
中也さんは流石にもう慣れたのか苦笑いで、私は当然だと返す。
『ずっとここにいるのももう切り上げないといけないなぁ……ありがとう二人共。色々ついてきてくれて』
「い、いや………結局やっぱ帰ってくる気ねぇなこれ」
『立原…?』
「あ?…!あ、いや、なんでも!!」
何かを呟かれた気がしたものの集中していなくて上手く聞き取れず、聞き返すと慌ててはぐらかされた。
まあ、言いたくないんなら別にいいんだけど。
『うん?それじゃ、また____!』
言いかけたところで、中也さんにグッと肩を掴まれたまま引き寄せられる。
『え、っと…中也さん?』
「……お前の怖がるもんは、全部俺がまとめて始末してやるよ。安心しろ」
『!…うん、中也さんは強いもんね……でも無茶したらダメだよ?』
短くおう、と返されて、首領の頭の中にはもう組合のどの構成員と誰が当たるのかまで予想がついているのだろうと確信した。
私は勿論、誰が今晩誰と当たるのか、分かってた。
………あの人の戦力だけは私の中でも未知数だ。
ここに関しては、最早中也さんを信じるしかないのだが…どうか、悪い事が起こりませんように。
どうか彼が、私のために無茶をしませんように。
肩を離されてトウェインさんの方に歩いて行き、中也さんと立原にバイバイとだけ言って歩き始める。
私の怖いもの…今回で言えば触手だろう。
あれの正体を中也さんが知っている…しかし、逆に言えばそれしか知らない。
出来ることなら、穏やかに事が終わりますように___
