第7章 克服の時間
「落ち着くんだ蝶ちゃん、取り乱すのが一番危険だよ。中也が到着するまで後どれ位になる?考えてみるんだ」
『普通の速度で東京から六時間かかるんだよ!?そんなの、どれだけかかると…「あいつの事だ、異能を使って向かうと言ったんじゃないのかい?」…!』
汚濁さえ使わなければ、身体を酷使したりしない限り、中也さんの身体に負担はほぼかからない。
それなら、通常速度の何倍かの速さで向かう事が出来るはずだ。
中也さんの性格上、自分が出せる全力を出して来てくれてるはず。
ポートマフィアの小型船が耐えられるスピードで、中也さんが飛ばしてきているとするならば…
『二時間…早くて一時間半。船が壊れさえしなかったら、それだけのスピードで来れるはず』
「そうだ。あいつの身体は蝶ちゃんのために丈夫に出来てるから、水平方向への加速程度なら、そんな時間は耐えられる。逆に言えば、その間だ。それだけの時間逃げ切れば、たとえそっちに組合が移動していたとしても、勝機がある」
『…逃げ切る?』
そう、逃げるんだ。
太宰さんの、酷く真剣な声が響く。
「中也に枷を壊してもらいさえすれば、蝶ちゃんも能力が使えるようになる。そうすれば、それこそ扉を使ってでも壁を使ってでも、学校の皆も守れるはずだ。それに何より、中也がいるということは、中也の戦力があるという事だよ」
『……中也さんが来るまで逃げる…今のこっちの状況、太宰さん分かってます?』
「分かった上で言っているんだ。だから一刻も早く敵から治療薬を奪い取って、どこか確実に隠れられる場所に避難を____」
太宰さんが言いかけた時だった。
「な、何!?誰ですか!!?」
「なんでそんなところから…!!」
『!太宰さん、電話ありがとう!緊急事態みたいだし、言われた通りにすぐに終わらせて逃げるようにします!では!!』
「了解だ、中也が行くまで粘ってくれ」
皆の声が聴こえて、電話を切って急いでそちらに駆けつける。
すると、見覚えのある人物がそこにいた。
『皆、どうし…っ!どうして貴方がここに?』
嘘でしょ…嘘だって言ってよ誰か。
「蝶ちゃん!この人と知り合いなの!?」
平生を装って冷静に返事をする。
今ここで皆を不安にさせるわけにはいかない。
治療薬を入手しなくちゃ、いけない…
『…会社の取引先の人。皆ごめん、先に行ってて。すぐ追いつく』
