第7章 克服の時間
「白石?いないって…」
『中也さん、いないの…?私、また一人になるの?』
私の言葉がおかしくなっているのに皆気がついて、ざわめき始める。
「は?中原さんは横浜だろ?こんなところにいるわけ…」
「また一人って、皆ここにいるよ…?」
「……磯貝、中也さんに連絡。急いだ方がいい。多分これ、相当キてる」
カルマ君が磯貝君に何かを言ったかと思えば、優しく私を包み込んで、頭と背中を撫で始めた。
しかし今の私には触れられることが恐ろしくてたまらなくて、しかし身体に力もちゃんと入らなくて、身じろぐもののカルマ君が離せない。
『やっ…何するの……、やだ、ヤダッ!!』
「俺だよ蝶ちゃん、落ち着いて…!お願いだから、中也さんにはあと数日我慢すれば会えるから!」
『触ら、ないで…私に触らないでっ、!……お願いします…ッ』
私が一番、わけがわからない。
カルマ君はあいつじゃない、フランシスでもない。
私に酷いことをするような奴とは違う。
あったかい人……そのはずなのに。
中也さん以外の人が、恐ろしい。
この首輪が、電流が、能力が使えないのが、怖い。
中也さんに、会いに行けない。
こんな事をしている場合じゃないのに、身体が全然、動いてくれない。
「!繋がった!カルマ!」
「!良かった…中也さん、ちょっと話があって」
『……中也さん?』
中也さんという単語が聞こえて、ピタリと動きを止める。
すると、少ししてからカルマ君に、磯貝君の携帯を差し出された。
それを受け取ろうと手を伸ばすものの、それさえもが恐ろしくて、腕を引っ込める。
「…怖くないよ。ただの携帯だから…向こうにいるのは中也さんだけだ」
『……ッ、ごめんなさい…、触れない、です』
ポツリと漏らした。
本音なのかなんなのかももう分からなくなってきた。
「と、とりあえずここじゃあ全員目立ちすぎる!階段の踊り場に一度移動しよう!」
烏間先生の声に、今度はカルマ君が私を抱き上げた。
『!?…やッ!!あ……〜〜〜!!?』
状況判断も出来なくなって咄嗟に能力を使おうと…別の場所に、カルマ君の手から逃れるように、テレポートをしようとした。
しかしその瞬間に、ほんの一瞬、身体中に電流が流されたのだ。
偽物なんかじゃない、今のはまだ軽いものだったからまだいい……けど、この感覚は本物だ。
本物の、あの首輪だ。
