第28章 少女のいる世界
お世話になった浦原さんや黒崎さん夫妻にお礼を言ってから、元の居場所に返してもらう。
するとそこはポートマフィアの拠点…かと思いきや、落ち着く感覚が同じだっただけの、どこかの建物の中。
靴を脱いで上がるのに、抵抗がない。
その空間にいるのに、違和感がない。
多分私は、ここにいても許される…許されてきた。
中に入ると、妙に知っているような間取りと家具が並ぶ光景が目に映る。
『…ここ、お家?』
「そう、お前ん家。正確に言うと俺の家で、お前の家」
どこでもいいから、落ち着くところでくつろいどけ。
なんて言って台所へ入る彼に、トテトテと後ろからついていく。
すると冷蔵庫をあさり始め、材料を出して調理器具を…
「……お前、そこが落ち着くの?しんどくないか?」
『…ダメ、ですか?』
「いや、いい。けど、立ちっぱなしになっちまうが…ああ、なんなら椅子にでも…」
ぎゅうう、と腰に回した腕に、彼はその提案を取りやめる。
そして私の目を見てまた言った。
「お前…、ほんっと…まんまだな」
『…ここが一番好き』
「…本当に?嘘ついてるだろ」
なんて言った途端に、視界が暗くなる。
浦原さんの所にいた時程ではないが、少し力を入れて抱き寄せられて…それから、頭と背中を手のひらで撫でて、大事に大事にしてくれる。
どうやら私は、本当に嘘をついていたらしい。
…こんなのずるい、知らなかっただけなのに。
「蝶はこっちの方が好きだろ…違うか?」
『…中也さん、ご飯は?』
「そんなのより今はこっち優先…ここは怖くない?」
『う、ん…』
「……大丈夫、心配しなくても…何があっても俺がちゃんと護ってやる。お前に記憶があろうとなかろうと、それが変わることはない」
『覚えて、ないんだよ…?中は…、中也、さんは…こんなに大事にしてくれるのに』
「お前が先に俺のところにきたんだろ?勝手に俺の執務室見つけ出して、勝手に俺の外套見つけて……大事にしてくれてんじゃねえの」
そうか、だから森さんも、他の人も皆、何も言わなかったんだ。
私をそこに、おいていてくれたんだ。
『…よく、大事にできるね。…覚えてないのに』
「………俺の記憶が無かった時に、お前も俺を大事にしてくれたからな」
『…、?…あ、れ…?……そんな、こと…』
聞き覚えが…ある。
そんなことが、本当に…?
