第10章 衝動【カラ松、チョロ松】
【絵菜side】
チョロ松くんに自宅まで送ってもらった後、疲れた体を引きずるようにして自室のソファに倒れ込む。
…長い1日だった。
いろんなことがありすぎて、精神がものすごく不安定になってる。このまま眠ってしまいたいくらい…
『心の整理がつくまで、家でゆっくりしておいたほうがいいよ。また連絡するね』
別れ際、チョロ松くんはそう言って来た道を戻っていった。あえて最後まで、何も聞かずに。
話すべきことはお互いたくさんあったはずなのに、私を気遣ってくれた。
…あんなに優しい人たちに、これ以上黙ったままでいるわけにはいかない。
ちゃんと話そう。明日、みんなに…。
みんなといえば、カラ松くんはもう家に帰ったのかな。
あいつに捕まってる…なんてことは万に一つもありえないとは思うけれど、心配だな…。
ピンポーン
突然、チャイムが鳴り響く。こんな真夜中に、誰だろう?
まさか、あいつじゃないよね…?
立ち上がり、玄関に向かう。
「はーい、どちら様でしょうか?」
いつもなら確認なんてしないのだけれど、用心するに越したことはない。
返ってきたのは、あいつではない、でもよく知っている声。
「絵菜か?俺だ、カラ松だ。その…良ければ、開けてほしい」
「!」
今まさに心配していたカラ松くんのあまりにも唐突すぎる訪問に、戸惑いと安堵が入り交じりつつ、急いで扉を開ける。
「カラ松くん!よかった、無事だったん
私の台詞は、そこで不自然に途切れた。
―なぜなら、扉を開けた瞬間、カラ松くんに勢いよく抱き締められたから。
「!!か、カラ松くん…?」
両腕で包み込むように、けれど力強く抱き締められる。まるで、離すまいとしているかのように。
「…すまない。しばらく、こうさせてくれないか」
そう耳元で囁くカラ松くんの体は、少しだけ冷たくて。
「……うん」
これ以上彼の体が冷えてしまわないよう、私は彼の背中に腕を回して、優しく抱き締め返した。