第26章 桜の咲く頃 三幕(九歳)
結局、湖が昨日がんばりすぎて寝ていただけだったのだが、いつもの通りだ
鈴から湖に姿を変え、謙信にしがみついて寝ている
謙信も起きてはいるが、好きなようにそのままにさせていたのだ
湖の体には羽織が掛けられてはいるが、その下は…
「と、殿!いい加減、起きられてよろしいかとっ!」
意を決し、襖を開ければ予想通りの姿でいる二人に兼続は目を背けながら言い放つ
その大声に湖は目を開け
「あれ…もう朝?」
と、謙信にまたがった状態で起き上がるのだ
「っ?!」
シュ!タン!!
バタバタバタ…
襖の閉まる音と、その風圧に目をぱちくりさせる湖
「兼続、どうしたの?謙信様」
襖の方を見たままで、またがる謙信に聞くのだ
「…湖…とやかく言うつもりはないが」
上半身を起こした謙信が、その身を羽織で包む
「誰にでもその姿を見せるな」
白い透明感のある肌、まだこどもの体だが女児に間違いはない
少しだけ膨らみの出てきた胸は誰が見ても、女の物だと解る
羽織の前を持った湖は、「気をつけてるよ。でも、兼続だったでしょ?」と言うのだ
起きて身支度が済めば、なぜか妙に苛つく心を静めるために標的になったのは…兼続だ
その日、城内では顔を合わせれば謙信と兼続の攻防
一方的に兼続がやられているが、政務を怠るわけには…と使命感の兼続は城を出ない
もちろん湖の勉強は中止だ
昼からの時間、戻ってきた佐助と家康と共にその日を過ごした湖はそんな事は知らず
夕餉時間に、げっそり疲れた様子の兼続を本気で心配した
家康までも御殿に帰ったあとに「滋養薬と胃薬…」と言い薬を渡されたくらいに