第126章 相手の心を開きたいなら、まずは自分の心を開け。
係員に場所を聞いて医務室へと足を運ぶ土方。医務室に辿り着くまで土方は葵咲を抱きかかえたまま。入ってすぐに室内を見渡す。休憩中なのか、席を外しているだけなのか、保険医の姿はなかった。
土方「誰もいねぇのか。」
呟くように言った後、ベッドの上へと葵咲を降ろす土方。葵咲はベッドの淵に腰掛けた。
保険医不在の為、仕方なく土方は勝手に室内を物色する。そしてタオルとドライヤーを見付け、葵咲へと手渡した。
土方「とりあえずこれ使っとけ。」
葵咲「うん、ありがとう。」
まずはタオルで着物の上から身体を拭き、ドライヤーを当てる。その間に土方は包帯と塗り薬、テーピングを探し出した。少し大袈裟かもしれないが、しっかり手当てするに越したことはない。土方はベッドに腰掛けている葵咲の前へと しゃがみ込み、葵咲の足の手当てをしようとする。その時、葵咲が浮かない顔をしているのが視界に入った。
土方「ん?どうした?」
葵咲「土方さんは…引いてないの…?」
土方「何の話だよ。」
何かあっただろうか?全く思い当たる節がないといった素振りで土方は片眉を上げる。いつもどおりの土方ではあるが、葵咲は少し言いづらそうに言葉を押し出した。
葵咲「いや、その…今日の私、全然ダメダメで迷惑掛けまくってるし、犬の糞の臭いし…。」
しょぼんと俯く葵咲に、土方は少し呆れた様子だ。そんな事か、しょーもない。そう言わんばかりにハァと息を吐いた。
土方「どれも不可抗力だろ。仮にオメーの失態だったとしても、これぐらいで引きゃしねぇよ。」
葵咲「っ!」
その言葉に葵咲はポッと頬を染めて顔を上げる。その時ふと、土方は以前あった出来事を思い出した。
(土方:そういや、いつぞやのアレもそうだったな。愛なんて…幻想だと思っていたがな。)
それは松平の娘、栗子の彼氏を追い払う為、この大江戸遊園地へと訪れた時の事である。(銀魂コミック第8巻、65訓参照。)あの時の二人の気持ちが本当の意味で分かった気がする。こういうもんなんだな、そう心の中で呟いた。