My important place【D.Gray-man】
第26章 鳴かないうさぎⅡ
露店から離れると、オレの視界にさっきのフードを被った人物が映り込む。
思わず足を止めれば、ぺこりと頭を下げて背を向け去っていく。
「誰?」
「あー、オレもよくわかんねぇんだけど…」
不思議そうに問いかけてくる雪に、とりあえず掻い摘んでさっきのことを話した。
多分、声からしてまだ幼さが残る子供なんだろう。
そいつは雪があの男に何をされるか、当然の如くわかっているようだった。
「え。なら感謝しないと」
「まぁ…って雪っどこ行くんさっ」
「お礼! ちゃんと言わないとっ」
説明をすれば、慌てて雪が子供を追いかけ始めた。
仕方がないから後を追う。
「──あのっ」
暗い夜道を歩いていた小さな体は見合った小さな歩幅だからか、すぐに追いつくことができた。
「ラビから聞いて…さっき私のこと、忠告してくれたんだよね? ありがとう」
中華まんの入った紙袋を抱えたまま頭を下げる雪に、深めのフードを被ったそいつが振り返る。
「いえ…偶々見えただけですから」
見えた?
「お礼。と言っても何もないけれど…これ、どうぞ」
「い、いいえ。お礼なんてそんな」
持っていた紙袋から中華まんを差し出す雪に、ぱたぱたと顔の前で両手を振る。
「忠告のおかげで買えたようなものだから。どうぞ貰って」
にっこり笑って差し出す雪に、断れないと踏んだのか。子供は小さな手で中華まんを受け取ると、そっとフードを外した。
「ありがとうございます…」
フードの下から現れたのは、やっぱりな。その背丈や声通りの、幼さが残る顔の少女だった。