My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「………」
『元気出しぃやぁ、マスター』
「………」
『そろそろ夕飯の時間やっしゃ。マスターの好きなデザート食べに行かへん?』
「………」
『………また来年があんねやろ。その時にハロウィンやったらええって』
「………」
『マスタぁ~』
新本部となった教団の広大な庭。
広い敷地内の一角に設備されたベンチの隅で、ティモシーは膝を抱えて小さく縮まり座り込んでいた。
周りをふわふわと浮き舞いながら声を掛ける憑神のことなど、まるで見えていないかのように無反応。
どんよりと暗く凹んだ瞳は、力無く芝を見つめ続けていた。
結局この日一日、散々悪戯はして回ったものの、菓子も多少は手に入れたものの、ハロウィンらしいことは何一つできなかった。
ただハッピーハロウィンと言い合いたかっただけなのに。
共にハロウィンの空気を楽しんでくれさえすれば、それでよかったのに。
聖戦の戦士となれば、それすら許されないのだろうか。
「………くすん」
『…マスター』
抱いた膝に顔を押し付けて、鼻を啜る。
教団に入団して、院長の前で泣いたのが最後。
それからほとんど見せたことのなかったティモシーの弱々しい姿に、憑神も表情を暗くした。
9歳の少年なら、こんな姿は当たり前に見られるものだ。
それだけ入団してからずっと、彼が気丈に振る舞っていたことがわかる。
まだ子供なのだ。
しかしもうただの子供ではいられない。
その覚悟を、ティモシーも抱えていたのだろう。
なんと声を掛けようか。
くすんくすんと小さな泣き声を上げる主を前にして、憑神が途方に暮れていた時だった。
さくりと、芝を踏む音が一つ。
『!』
気配を感じ取った憑神が振り返る。
しかし泣き込むティモシーは気付いていない。
さくさくと進む足音は迷い無くティモシーの元へと向かうと、両手を小さな顔に向けて伸ばした───
「トリック オア トリート」
伸びた両手はティモシーに触れることなく。
両手を器の代わりに皿にして、投げ掛けた言葉は魔法の呪文。
「……ぇ」
ずび、と鼻を鳴らして上げた顔。
ティモシーの琥珀色の瞳に映ったのは、ふさふさの大きな三角耳だった。