第48章 欠けた力
「…言っておくが、これはキラーの意志でもある。」
「キラーの?」
先ほど家に戻ったキッドはキラーを起こし、モモがつきとめた事実をすべて隠さず話したのだという。
「アイツは、助かる可能性が低くとも、腹を切ってほしいと言った。俺も同じ意見だ。」
「…そんなの、自殺行為だわ。」
だってここには、麻酔薬だってない。
そんな状態で腹部を切ったら、痛みで死んでしまう。
「そうかもな。だが、やらなけりゃ死ぬだけだ。…俺たちは1%でも、生きる道を選ぶ。」
例え、この手で仲間の命を奪うことになっても。
「……。」
キッドの覚悟と強さを目の当たりにして、モモの指から力が抜ける。
掴んでいた手がずるりと離れると、キッドは今度こそ振り向きもせずに立ち去っていく。
なんて、強い人。
同じ年数を生きているはずなのに、どうしてこうも自分と違うのか。
もし自分がキッドの立場なら、絶望に嘆いただろう。
だけど彼には、前に進む力と、不器用な優しさがある。
あの時、キッドのような強さがあれば、サカズキを前にして違う選択ができただろうか。
1%でも、みんなで助かる方法を選べたのか。
わたしは弱い。
だから強くなりたかった。
みんなを守りたかった。
でも、わたしはちゃんと自分に足りないものを、正確に理解していたのだろうか。
わたしが求める強さって、いったいどういうものなんだろう。
無意識に握りしめた拳がガサリと音を立てる。
受け取ったままの羊皮紙が少し潰れた。
あれだけ厳しいことを言っておきながら、キッドはモモに逃げ道を用意する。
これを持って海賊船に行けば、本当にこのまま島を出られるのだろう。
すべてを投げ出して、嫌なものから目を瞑って。
それを彼は、責めたりしない。
「1%の可能性…。」
実際は、助かる可能性は1%にも満たない。
でも、彼らはそれを選んだ。
どうしてだろう。
無理だって言ったのはモモ自身なのに、そんな彼らがひどく羨ましい。
「できるかな、わたしにも…。」
愚かな選択を、わたしもしてみたい。
ぽろりと地面に、羊皮紙が落ちた。