第44章 剣と秘薬
後ずさるまま部屋に引っ込もうとすると、すかさずローが首根っこを掴んだ。
「なにをしている、早くしろよ。」
「は、離して…ッ! ロー、あなたまさか、変な趣味でもあるの!?」
そうだと答えられたらどうしようと思いつつも、尋ねずにはいられない。
しかしモモの心配とは裏腹に、ローは呆れた声を出した。
「は? お前、なにを言ってやがる。」
「なにって…、ローが変なことを言ったんじゃない!」
まるでこちらがおかしいとばかりに言うものだから、ついムキになる。
「変なこと? 俺はただ、薬を抜いてやるから服を脱げと言っただけだが。」
「ふえ……?」
薬を抜く…?
「お前、俺を誰だと思ってんだ。」
誰って。
ハートの海賊団の船長で。
オペオペの実の能力者で。
医者で…。
そういえば、昔、オバケの森で毒に侵されたシャチとペンギンを治療したのはローだった。
彼は、患者の身体から毒や薬を抜くことができる。
瞬間、モモは顔から火を吹く勢いで赤面した。
つまり、脱げってそういうこと!?
「期待させたみたいで悪ィな。」
「違…ッ、あなたが…ちゃんと説明しないから…!」
脱げだけじゃ、全然わからない。
モモは怒ってニヤニヤと笑うローを睨みつけた。
「だいたい…ッ、薬を抜けるのなら昨日してくれれば良かったのに!」
そうすれば、あんなに悩むこともなかった。
「自然に薬が抜けるんなら、それに越したことはねェんだよ。俺だって100%薬を抜いてやれるわけじゃねェ。」
どんなに能力を駆使しても、僅かに体内に残ってしまう。
「それに…。」
「それに、なに?」
急に言葉を切ったローに、まだなにか理由があるのかと続きを待った。
「イヤ、なんでもねェ。ホラ、さっさと脱げよ。それとも脱がして欲しいのか?」
「そんなわけないでしょう! ちょっと、あっち向いていて。」
「なにを今さら…。」
モモの身体なら、隅から隅まで見ている。
「いいから! 早く!」
「はいはい…。」
くるりと後ろを向いてやれば、モモはおとなしく服を脱ぎ始めた。
衣擦れの音を聞きながら、ローは少しだけ残念に思う。
それに…--
モモの子供の頃を垣間見れた気がして、なんだか嬉しかったなんて、本人には言えやしない。