第11章 漆黒の棺桶
「染め直すか?」
清治君を見る彼。
「…いや、このままでいいッス。」
清治君は、首を横に振った。
いつものように揺られる電車。
相変わらず満員で、人が密着してくる。
時々臭ってくる加齢臭や、キツい香水の臭いもだいぶ馴れた。
だけど一番なれないのは、太股に触れる人の手。
まるで撫でられているようで、正直気持ち悪い。
今日の隣は、見た目が初老くらいのスーツ姿のおじさん。
先程から足に手が触れている。
「……っ――。」
なんとも言えない感覚に、唇を噛むあたし。
辰川の時みたいにあからさまな痴漢もいやだが、こういったような痴漢かどうか判断しがたい行動も、かえって気持ち悪い。
でも、始めは"こんなに人が多いんだからしかたない"そう思ってた。
だけど、しだいに上がってくる手。
持ち上がるスカート。
下着に触れたことで気付いた。
"確信犯"だと。