第2章 新しい景色達
「七瀬君、ちゃんと・・・起きてる?」
「・・・ん」
・・・・起きてないな・・・。
瞼を落とす速度の遅さから、眠たげな雰囲気を感じ取った。どうしようかと少し考えた末、少々古典的ではあるが物で釣ることにした。
台所にはしり鯖缶をとってくる。
キリキリと開けて彼の耳元で鯖缶をかぱっと開ける音を聞かせてやると、猫のごとく素早さで私から鯖缶を奪い、お前には食わさないという目線を向けられた。
「・・・やっと起きた」
「人の物を勝手に開けるな」
「ごめん、それは謝るー・・・って、そうじゃない・・・」
再び正座に座り直す。
いつもと私の雰囲気が明らかに違っているのを察したのか、彼もさすがに何処かへ行こうとはしなかった。さっきは寝ぼけてるだけだと思ったが、聞いてくれそうな事に安心した。
「あの・・・」
「・・・」
「・・・・・・ごめんなさい」
「!」
今まで不機嫌そうだった瞳が少しだけ開かれる。
どうやら驚いているようだ。
どうしてだろう、私の心は今ひどく落ち着いている。
「怒鳴っちゃったこと・・・あれは私が間違ってた。真琴君にあんな態度とったのが許せなかったんだけど、そうだとしても言い方ってものがあったと思う」
彼はただ私の話を黙って聞いていた。
私はゆっくりと慎重に言葉を紡いで行く。
私が思ったことをちゃんと伝えようと一生懸命になった。
「それに、好きな事をそうやって好きでもないのに好きって言って嘘をつかれたら嫌だよね。知らなかったこととは言え・・・ごめんなさい」
「・・・」
「その、私はまだもしかしたら自分を誤魔化してるかもしれない。・・・でも私、絶対七瀬君に水泳のこと教えてもらいたい!だから努力する!七瀬君に私は本当に水泳が好きだって思ってもらえるまで、・・・いやそれじゃ意味ないな・・・・・・私が好きだって確信できるまで!」
そうだ、最初からこういえば何もかも済んだんじゃないだろうか?
そんな風にも思ったが、こうして彼の泳ぎに魅了されていることに気付けたのも今までいろいろ回り道をして熟考した結果じゃないかと思えた。
とても清々しい気持ちだ。しかし肩には異様に力が入った。