第46章 “計画された犠牲”
操作盤のすぐそばに倒れていた、さっきまで靄だった“香くん”が、ゆっくりと体を起こす。
長い夢から覚めたように、ぱちぱちと目をしばたいている。
瞳からは濁りが消え、いつものように澄んでいた。
「まったく、お前らは本当にムチャばっかりあるね」
他愛ない小言を言うような口ぶりで、耀は香くんに肩を貸した。
抱き起こされる香くんは、なにがなんだかわかっていない顔だ。
「けど、よくやったある!」
ぱっと明かりを灯すような笑みは、突き抜けるような蒼天によく映えていて。
どこまでも優しくて、安心させるその笑顔に、頭のどこかで激しいサイレンが鳴り始めた。
どうしてここにいるの、とか、なぜパスワードを知っているの、とか。
――なんで、”透けてるの”、とか。
そんな問いに答える時間は、誰にも与えられていなくて。
「……行っちゃ、ダメです」
無意識に、耀の手をとっていた。
耀は少し驚くような表情を見せたあと、フッと微笑む。
ワガママを言われて困っているような、そんな笑み。
――視界に、きらきらした光の粒子が舞い始めた。
”それ“は耀から出ていて、きらきらが溢れるほど耀の体は見えなくなっていって、
「……我の弟たちのこと、頼んだあるよ」
あたたかな声を最後に、光の粒子だけが世界に残された。
中空を舞うきらきらした瞬きは、やがて空気に溶けるように見えなくなった。