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【NARUTO】白無垢の誓い

第1章 入国―Engagement―


カゲロウは斜め後方に視線を投げかけた。

その先にすっとした背筋を前に倒し、頭を垂らした姿勢で控えていた二十代そこらの少女がいる。

「シン、此方に来なさい」

「はい、父上」

まるで羽毛を纏っているかのようにふわりと立ち上がり、音もなくカゲロウの三歩横につく。

白を基調とし金糸で牡丹の花が刺繍された振り袖をそっと両側に垂らす。

面を上げた少女は雪のように白い肌に薄紅の花弁を添えて柔らかく微笑んでいた。

「お美しいお嬢さんですね」

たとえ建て前上であってもヒアシがここまではっきりと人を褒めるのは珍しい。

「勿体無いお言葉です。改めて御紹介します。舞鶴宗家の長女、舞鶴シンです」

「お初にお目にかかります。舞鶴シンと申します」

シンは両手を添えて深々と頭を下げる。

動きに淀みはなく、緊張しているようには見えない。

裏で政治が動き、さらに権力者の家へ嫁ぐとなれば、どんな精神力の持ち主でも失敗を恐れ不安に駆られる。

里の外からやってきたのなら尚更。

にも関わらずそんな不安どこ吹く風というようにシンは落ち着き払った表情をしている。

心の隅で誰かからのフォローを受けられると安心しているとすれば、そんな箱入り娘の目を覚まさせる必要がある。

「ようこそいらっしゃった。今日から此処がそなたの居場所だ。本来なら、あまり気を遣わず楽に過ごして欲しいと言いたい所だが、あいにく当家は別格だ。そこで一つ言っておきたい。戸惑いもあろうが嫁ぐからにはそれなりの―――」

「覚悟しております」

シンの言葉が素早く遮った。

今までと何一つ変わらない声のはずなのに、一瞬別人に見えた。

話に途中で割り込んだ娘の無礼に腹が立っているであろう父親のカゲロウを横目に、シンは当たり障りのない調子で続ける。

「私の言動全てが家名に関わるとおっしゃりたいのですよね?」

「―――あぁ」

「でしたらご心配なく。私の身は御家に仕え、血を以て忠誠を誓います。運命を共にする主君に迷惑などかけられましょうか?」

凛と研ぎ澄まされた黒い瞳は全てを見透かしているようだ。

現にシンはヒアシに見くびられていると察していた。

ヒアシの驚いた表情を見ればシンがただのお嬢様ではないと理解したのだろう。

「はっはっはっ。カゲロウ殿、そなたの里は軍事主義なのですか?」
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