第23章 安息
「アリスから一番遠いのは、私かもしれませんね」
深く息を吐いて、セバスチャンは踵を返した。その手には、水差しとグラス。彼の足音は、アリス達には聞こえることはなかった。
アリスとシエルは、二人揃って遅い朝食を取りにダイニングルームへとやってきた。頼んでもいないはずなのに、きちんと朝食の準備を済ませテーブルに食事を並べているセバスチャンがいた。
「おや、おはようございます。坊ちゃん、アリス様」
「今日の朝食はなんだ?」
「はい。ご希望をお聞きするのを忘れていましたので、様々用意してみました。お好きな物をお口にして下さい」
「……朝から、重い気がするわ」
ぼそっとアリスが言葉を零した。何種類物を朝食が並べられた光景は正直大きな食事会でも開くのかと突っ込みたくなる程だ。だが、それは考える必要のないことだったのを後で知る。
「おお! 美味そうだな! な、アグニ」
「そうですね。ソーマ様」
「……ソーマ?」
「お? アリスじゃないか! お前もここに居候か?」
太陽のような相変わらずの笑顔全開で、アリスの元へと駆け寄ってきた。
「ええ、そうよ。今日から宜しくね? ソーマ」
「おう! じゃあまずは、屋敷を案内してやらないとな」
「流石ソーマ様!! なんて慈悲深くお優しい……っ」
「お前達、ちゃんと頂きますをして食べろよ」
シエルは一足先に食卓についた。それに習って、アリス達も席につく。ソーマの明るい声が、食卓を満たす。そのお陰もあり、アリスは穏やかな気持ちで食事を取ることが出来た。