第7章 strategie⑦
〝ピーンポーン〟
その時だった。部屋のインターホンがなる。
やばい。
長年芸能界にいた俺はすぐに感づいた。
恐る恐るインターホンの画面を見てみると、想像通りの光景が広がっていた。
沢山の報道陣が囲んでいたのだ。
今まで殆どスキャンダルのなかった俺は対処に困り、どうして良いか分からずタバコを手にとって冷静に考えることにした。
そもそも昨日の今日でこんなに細かなヒロカの個人情報が流れるなんておかしくないか。
いくらなんでも仕事が早すぎる。
夕方くらいに写真を撮られてそこから彼女の素性を調べる事なんてできる筈がない。
恐らくもともとマークされていて、決定的な昨日の写真を撮られて、今朝放送された。という流れだろう。
しかしマークされる程あやしい行動とったか。
10年以上スキャンダルがない俺がパパラッチに目つけられていたというのは妙だ。
と、いろいろ思考を巡らせていると、あることに気がついた。
ヒロカの情報は赤裸々に流されているのに対して、アンリの情報は全く流れていない。
いくらアンリが一般の女性だとしても、四角関係と銘打っているのだからアンリの情報が全く流れないのはあまりに不自然すぎるのではないか。
もしかして。
俺は思う。
〝でも一つだけ覚えておいてね。わたしと別れたこと絶対に後悔させてやるから。わたしのこと舐めちゃだめだからね。〟
アンリの昨日の言葉を思いだす。
俺はゾッとした。
アンリがやった証拠はない。
真実なんて本人にしかわからない。
しかし俺はあまりに迂闊だったことは確かだ。
なんてことになってしもうたんや。
頭がパンクしそうになった俺は思いっきり髪を掻きむしった。