第5章 Locations subject to rainbow
[晦渋混濁]2
「それじゃあ私、二番隊へ行って参ります」
「行ってらっしゃあい。今度は転ばないようにね」
奈々美は乱菊に空笑顔で返すと以前怪我をした左腕をさすった
(今またあんな事されたら、きっと私は迷わずあの人たちを斬ってしまうだろう…。お願いだから今日はやめてくれ…!)
最後に左腕を力ずくで掴むと、冬獅郎の声が降ってきた
「おい楠木、お前本当に大丈夫か?何なら俺が行ってくるぞ?」
「いいえご心配なさらず。日番谷隊長も毎日大変でしょうから休んでいてください」
奈々美の言葉を最後に執務室の扉は力無く閉められた
「ねぇ隊長」
「なんだ」
「…もう少しあの子の心配したらどうです?」
そう言う乱菊の目には怒りが籠もっている
冬獅郎はその目から逃げられない
「は…?お前何言って…」
「自分が好きな女の事をろくに気にもとめられないのかって事です!!もうあの子が…奈々美がボロボロなのは分かってるでしょう?!
それなのに何故あなたは奈々美を放っておく様な真似ばかりをするのですか!!」
次第に乱菊の頬は涙で濡れた
その様子に目を合わせながら動揺を隠しきれない冬獅郎
だが彼女怒りは収まらなかった
「隊長だって知ってるんでしょ?あの子がどこかの隊の子たちに嫌がらせされてるって。格下相手に未だに手を出していない奈々美の気持ちも!
あの子は必死に隠そうとしてるけど分かって貰いたいに決まってるでしょ?私でもなくあなたに」
そう言うと乱菊は泣き崩れた
運命の歯車の崩落は止まる事を知らない
『壊れたらまた作り直せばいい』という理論は一体どこから来たのだろう
一回崩れ去ってしまえばたとえそこに欠片があれど、修復不可能なものだってあると言うのに…
晦渋混濁(カイジュウコンダク):暗く沈んで生気がなく、濁ってるようす