第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
合図を聞いて始めに飛び出すのは私
誰よりも速く、自らの肉体だけを今は武器に敵に向かう
真正面に、馬鹿正直にいつも通りに行って勝てる相手ではない
だが、今の私なら出来る筈だ
"白"が来た時に開く頭の引き出し―それを自らの意思で、必要な分開ける事が
走りながら一瞬目を閉じる
そして見つける―あの引き出しだ
獣染みた、よく分からないものが詰まったようにも見えるパンドラの箱
それを、意思を以て開き―
(あの"感覚"を…引っ張り出す!!)
目を開くと同時に加速する
体感でも分かる程、走る速度が速くなり、あっという間に接敵―拳と拳のぶつかり合いとなる
自分の右手が敵の拳とぶつかる時には既に私の左手は拳を作り、敵へ迫っている
敵は既にぶつかった手を素早く流すと、その勢いのまま私の左手も払い、反撃の動作に入る
だがそれは私には"視えている"
流された右手を使い、反撃の拳を払いその勢いのまま後方宙返りの要領で両足の蹴り―サマーソルトを敵に浴びせる
まだまだ私は加速する
着地と同時に敵へ向かい胴体、顔関係無く連続で両の拳を撃ち続ける
敵は抵抗を試みるが、先のようにはいかなくなっており、私の拳を受けている
漸く出た反撃の拳は電撃を纏っていたが、それは関係無い
何故なら―
「私が、速い!!」
―至極単純な理屈が存在しているからだ
敵の拳を身体を反らして避け、逆に腹に拳を撃ち込み、敵を後ろへ大きく滑らせる