第15章 進路
時音は妖怪の頃からよくモテていた。
自分で言うのもなんだがオレも例外ではないし、自覚もしている。
逆に自分の周りで女たちが黄色い声をあげながら寄ってきているのに自覚していない方が馬鹿らしいと思う。
しかし時音は天然なところがあり、本人日く「わたくしには位を目当てで寄ってくる若者ばかりですわ」と言っている。
時音の言っていることも一理あるが、そいつらの中にも時音の姿に見惚れ、心を奪われる輩は沢山いるだろう。
全く……自覚がないから恐ろしい…。
呆れながら溜め息をはく。
そんなオレの態度に気を悪くしたのか、ジトリとした視線を隣から感じる。
時音「秀一、今の溜め息何?」
「なんでもないよ。それより時音、先生から聞いたけど…高校、聖皇受けるんだって?」
時音「え?そうだけど。それがどうかしたの?」
オレの質問に何も違和感を感じずキョトンとした目でオレを見てくる。
これだから心配なんだ…。
「『どうかした?』って…オレ、時音と同じ高校に行きたかったんだけど」
金持ち校なんて、オレの家じゃとても無理だ。
確かに時音は大きな稲荷神社に住んでいて、しかも実家は土御門本家というお嬢様だから仕方ない気もするが…。
時音「仕方ないでしょ、元々決まってたんだから。お父様が"聖皇に行け"って言うんだし」
「時音の父が?」
時音の父、元人間で現在は緋神子族国王・土御門珀時-ツチミカドハクトキ-。
時音の母、桜音と違って情が薄く、時音自身も寂しがっていた。
でも珀時も何故時音にそんな話を…
オレの心を読み取ったのか、時音が口を開く。
時音「お父様がね、"聖皇に進学しないと魔界に戻ってこい"って」
「どうして今更……」
時音「わからない。それかお母様がいなくて寂しかったりして」
「それはないと思うけど……」
時音「とにかく私は聖皇でいいの。聖皇の制服可愛いから」
もしかして、時音が先生に話した志望理由って…制服が可愛いからって言ったんじゃ…。