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【H×H イルミ 】黒と白のアリア 

第10章 霧の屋敷の裏側


厨房に立ったニナは、大鍋の蓋をそっと持ち上げた。

今日の屋敷の夕食はポトフだったらしい。
深い鍋の底には、まだ柔らかく煮崩れた野菜が少し残っている。

ニナは木匙でそれを崩し、鍋底に沈んでいた塩漬け肉を細かく裂いた。長時間煮込まれていたせいか、肉の繊維は指先で簡単にほぐれる。

小鍋にバターを落とす。
じゅわりと溶けたところへ、鍋底の具材を移して軽く炒めた。
余分な水気が飛び、厨房に香ばしい匂いが広がっていく。

程よく炒まった具材を鍋の端に寄せ、そこへ溶き卵を流し込む。
半熟になった表面を折り畳むように包みこんで、ニナは皿へと移した。


続けて、ポトフの残り汁を別の小鍋へ移す。
ニナは棚から塩漬けトマトの保存瓶を取り出しながら、居間で待たせているイルミに声を掛ける。

「ワインの残り……少しだけ貰いますね?」

潰したトマトを小鍋へ落とし、そこへワイン庫から持ってきた赤ワインを少量注ぐ。
木匙でゆっくり混ぜると、湯気と共に酸味を含んだ香りが立ち上がった。


「へえ、そういう風にするんだ」

いつの間にかイルミは背後にいたらしい。

「いつも賄いの時は、ワインビネガーを使うんですけど……」

ニナは鍋を混ぜながら、小さく続けた。

「お肉には赤ワインが合うって仰ってたので。せっかくだから、試してみようかなって」

刻んだ香草を落とす頃には、さらりとしていた煮汁は少しずつ艶を帯び、濃い赤色へ変わっていった。
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