第2章 迷宮のダンジョン
ほんとやめて。
何よほだされるって。
そんな単純な女じゃない。
正義感を振りかざして満足するような可愛げのある性格もしていない。
だからと言って、拒否ったってなんの問題もない、あたしが背負う責任だってこれっぽちもない。
そう言ってくれた太刀川さんの言葉もわからないわけじゃない。有り難いぐらいだ。
ただ、答え合わせがしたかった。迅さんの言ったことはあたしにはまだまだ信じ難いのが正直なところだけど。あれだけ手のひらで転がされても、信憑性のカケラも、実感すらも湧かないけど。
これまで平々凡々と何にも考えずに生きてきた女が、そんな大層な役を果たして演じきれるのか。それが見たいだけなんだよ。
「直感、大事なんですよね?」
「あー、」
「しくったみたいな顔しないでくださいよ。嫌なんですか?あたしがそっちに行くの」
「そんな顔してねーよ。もし俺がお前を止めようとしてるように見えてんなら、お前の目もたいがい節穴だぞ」
大歓迎だ。そう挑発的に唇の端を上げた太刀川さんに負けじと、同じような表情を返してやったのは意地だ。
不安がないわけじゃない。
怖さがないわけじゃない。
だけどそれよりもほんの少しだけ喜怒哀楽の楽の含有量が多かっただけ。
前見えねぇ。ぎっしり詰まったみかんの箱を抱えた背中を見送って。まだまだ甘えたいお年頃なしし丸を腕に抱えて。これから忙しくなるんだろうなと玄関の鍵をそっと閉めた。