第1章 シークレットメロディ
等間隔に並ぶ街灯の一番端、電球が切れかかってチカチカと光るそれは酷く目に不快だった。
冬本番、とまではいかなくとも、深夜帯のこんな時間には流石に堪える寒さに、体を震わせている隣の望月はさっきから一言も発していない。
俺の視線より低い位置にある横顔も悲壮感が漂ったまんまだ。
「あ、出水から連絡きた」
「なんて!?」
「……失血の割に傷は大したことないって。2、3日様子見で病院が預かる、だと」
「よ、よかった」
あぁ、そういやアイツ病院だったな。震えた端末で思い出した。
早々に忘れかけていた存在に、心底安堵したのかへなへなとその場にしゃがみ込む望月は、お礼しなきゃ、ぼそりとそう溢した途端石みたいに動かなくなった。
コイツの頭の中は今すごいスピードで情報を処理しているんだろうか。
無理やり叩き込まれた迅の言葉の威力が大きすぎて、どこからどうやって落とし込もうかと迷っているのがひしひしと伝わってくる。
大それた役回りの適任者に、わけもわからず抜擢されて。自分の本音とそれを天秤にかけながら葛藤するような表情は、見ていてあまり心地の良いものじゃない。
取ることなどしないと分かっていて差し出した手を、視界の隅に入れた望月が案の定、困ったような顔を向けた。
「ねぇ、太刀川さん」
「なに」
「なんかすごいことに巻き込まれてる気がするのはあたしだけですかね」
「いや、お前だけじゃないと思うけど」
「けど?なに?」
なんだろうな。もう随分と長くこっち側に居座ってるせいか、普通の感覚とやらが分からなくなってるんだよな。
俺が逆の立場なら、面白そうだから即、受ける。でも、それは一般的じゃない。世間の感覚に合わせて、彼女の気持ちを汲み取るとすれば。