第2章 『ミルク』ちゃん
「……おい、。どこにいやがる…クソが……」
を探しながら苛立ちまじりに空き教室の扉を蹴開けた爆豪は、その瞬間目を見開いて固まった。
視界に飛び込んできたのは床に押し倒され、肌を晒して震えると、その胸元に浅ましく縋り付く同級生の背中。
「……あ?」
爆豪の脳内が、一瞬で沸騰した。
「……てめぇ、何してやがる……ッ!!」
「がっ!? 爆豪……っ」
爆豪の掌が爆発を伴って、男子生徒の顔面を捉えた。
容赦のない一撃。
男子生徒は壁まで吹き飛び、音を立てて崩れ落ちる。
爆豪は肩で息をしながら、がたがたと震えて服を整えようとするに歩み寄った。
「……おい、大丈夫かよ」
「かっ、つき…くん…っ、あ、……っ」
顔を上げたの瞳は涙で濡れ、その胸元からは暴力的なまでに芳醇な香りが漂っている。
爆豪はその香りに一瞬だけ理性を揺さぶられたが、彼女を汚した目の前の男への殺意が勝った。
「あ、あ、ああ……! 違うんだ、爆豪! こいつがいけないんだよ!」
「黙れよ……」
壁際で鼻血を拭いながら、男子生徒が狂ったように叫ぶ。
騒ぎを聞きつけた教師や生徒たちが、廊下に集まってくる足音が聞こえる。
「こいつ、『無個性』なんかじゃねぇ! おっぱいから、ミルクが出てんだよ! 飲むと力が溢れてくる、ヤベェ個性を持ってやがるんだ!」
「黙れっつってんだろクソが……ッ!」
「本当なんだよ! 嗅いでみろよ、この匂い! の身体は、男をを誘惑して元気にするための道具なんだよ!!」
集まった野次馬たちが、ざわめきに包まれる。
「ミルク……?」
「そんな、淫らな……」
好奇と嫌悪と、そして汚らわしいものを見るような視線が一斉にに突き刺さった。
「……う、そ……やだ……」
は顔を覆い、その場にうずくまった。
隠し通してきた残酷な秘密。
それが、最悪の形で学校中に知れ渡った瞬間だった。
「……っ、見んじゃねぇ……!!」
爆豪が周囲を威嚇するように叫ぶがもう遅い。
の耳には心ない囁き声が、濁流のように流れ込んでいた。
助けに来てくれた爆豪の顔さえ、今の彼女には「秘密を知った一人」としてしか映らなかった。