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淫夢売ります

第72章   幸せな日常


☆☆☆
「そ・・・それって・・・?」
私の話を聞いて、彰吾がぎゅっと唇を噛みしめる。

「その後も、火曜日、そして水曜の夜、それから昨日も、なんとなく後ろから誰かに見られている気がしたんだよね・・・」
そう、ここのところの私の悩みはこれだったのである。

「ストーカー・・・じゃねえの?」
「わかんない。もしかしたら私の勘違いかもしれないし」

バン!と彰吾が机に拳を叩きつけた。それほど大きな音ではなかったが、私はビクッとし体を震わせてしまう。

「警察に行こう!何かあってからじゃおせーし」
「でも・・・。私の勘違いかも・・・だし。」

そう、スーパーで見た人と、マンションのエントランスから見た人が同じという保証もない。火曜日以降に関しては、実際に人影を見てすらいないのだ。

「ちょっと、疲れてて神経過敏になっているだけかも・・・だからさ」
「じゃあさ、せめて、俺に護衛させてよ」
「え?」
「毎日、帰りの時間教えてよ。そしたらその時間にさららの家の最寄り駅にさ、俺行くから」
「そんな・・・悪いよ」
「なんで?」
「だって、彰吾だってバイトとかあるでしょ?」
「もう辞めたよ・・・だって、来月には入社式だしさ」
「そ、そうなんだ・・・」
「頼れよ。さららから見たら、俺、頼りにならねえのかもだけどさ・・・。」
「うううん。頼りにならないなんてことない。・・・嬉しいよ・・・でも・・・」
「なんだよ」
「彰吾が疲れちゃう」
「バカ。さららに何かあったらそっちの方が嫌だ」

彰吾は真っ直ぐだ。
いつも素直で、飾らない。そして、私がそのとき一番欲しい言葉をくれる。しかもそれを、何のてらいもなくやってのけるのだ。

今も多分、その言葉がどんなに私の心を救ってくれたか、分からないでいるに違いない。彼が来てくれる・・・その言葉で、私の心の憂いはほとんど霧消してしまっていた。

「とにかく行こうぜ・・・今日はその・・・泊まれるんだろ?」
私がコクリと頷くと、伝票を持ち彼が立ち上がる。

『泊まれるんだろ?』その言葉はふたりの間の暗黙の了解。

互いを深く愛し合う時間を持つ・・・そんな意味の符牒だった。
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