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天狐あやかし秘譚

第98章 一業所感(いちごうしょかん)


その目を見た時、イザナミは、自身が祓われようとしている理由に、ようやく気がついた。

『ああ・・・そうか』

かつての伴侶の姿がそこに重なる。

ー勝てる・・・道理がない。
 あの方は、妾を置いて、逃げていったのだから。

それに比べて、このあやかしの目には、その思いには、ただ一点の曇りもない。
疑ってすらいないのだ。
自らの伴侶と決めた者の、その愛を。

『骸』となった醜い身体を何のためらいもなく抱きしめたこのあやかしの姿は、イザナミにとって神々しいまでに輝いて見えた。

『いたしかたなきこと・・・』

そっと、イザナミは目を閉じる。ふわりと、依代にしがみつく力を緩めた。
ダリの生み出した清涼なる風が、ざあっと黄泉路を吹き抜けていく。それは、彼女の魂を常世の奥へと、ゆっくりと追いやっていった。
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