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天狐あやかし秘譚

第96章 覆水不返(ふくすいふへん)


麻衣ちゃんの足取りも決して早くはないが、私のそれはもっと遅かった。一歩、一歩と進むたびに身体の重さが増し、内臓が爛れてしまっているのではないかと思うほどの苦しさが全身を襲う。ぎゅっと右手で胸ポケットのアレキサンドライト、左手で瘴気除けの札を握りしめ、なんとか周囲からの濁った悪気の重圧に耐え、歩みを進める。

「麻衣ちゃん!待って!」

ありったけの声を上げてみるが、その声は周囲にこだますることすらなく、異様な雰囲気を漂わせる空間に吸い取られていってしまった。

とにかく、行かなくちゃ・・・
その一心で私はまた一歩、足を前に進めていった。
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