第9章 事情聴取(相澤消太)
「……そ、そんな感じ……です……」
全部思い出すと恥ずかしくなってしまって、最後の方は消え入りそうな声になっていた。
いや勿論、えっちした事は伏せましたけども!
だから話が切れ切れになってワケ分かんないと思うんだけどこれが私の今の精一杯よ……
この何ともつまんなそうな話を聞いた青少年達の反応がちょっと怖い。
「相澤先生……男だぜ……!」
いや、今の話の何をどう持ってして男だと言ってらっしゃるの?切島くん。
「すごい……執念?」
執念って、こんな時に使う言葉だっけ?耳郎さん……。
「これはもう、相澤先生の作戦勝ちというか……先ずお客さんとして来店する事から始めて外堀から埋めていく作戦が秀逸すぎて……」
あ、緑谷くん何かブツブツ言ってる……秀逸?秀逸か……?外堀、埋まってる?
「相澤先生って、意外と激しい~!」
まぁ、激しいですよねある意味……分かるよ、芦戸さん。
「……私からこんな話聞いたからって、あんまりイジんないであげてね……」
後で生徒達に囲まれて何だかんだ言われていそうな消太を勝手に想像してしまって、そう言っていた。
「その先は?ないの?」
葉隠さんの一言で、その先も思い出していた自分が恥ずかしくなる。
「ない!ないない、ないよ!」
ブンブンと首を横に振ったけど、それがどうやらよくなかったらしい。
「あやし~!」
と、芦戸さんにツッコまれる。
「いや、ホントに……ないです……エリちゃん、出来たぁ……」
こんな話をしながら作業していて、よくミスらなかったなと思いながらエリちゃんに手鏡を渡す。
すると、嬉しそうな顔をしてくれたのでこっちも嬉しくなる。
ふと、手鏡の中のエリちゃんが私の方をじっと見つめてきた。
「どうしたの?エリちゃん」
「甘井さんは、相澤せんせ、すき……?」
はっ!
え、エリちゃんまでそんな……事を……
「う、うん……好き、かな……?」
何だか、こんな大勢の前で好きと言うのも気恥ずかしくてつい、そんな言い方をしてしまった。
「そっかぁ……」
エリちゃんが心なしか寂しそうな表情になる。
うっ……
私の返事が煮え切らないからそんなお顔、すんのね……
ごめんね、ちゃんと好きだから!
そう心の中でフォローした時、ガタンと寮のドアが開いた。