第2章 好きな色
★side女湯
足をつけて温度を確認すると、鈴は全身をいっぺんに湯船に入れる。ぱしゃんとお湯がはねた。
「ふわぁ〜、熱いね、野薔薇ちゃん」
「そう?ちょうどいいじゃない」
鈴と野薔薇は湯に肩まで浸かると、そろってふぅーと息を吐いた。
「気持ちいいね〜」
「伊知地さんてば、こんな穴場の温泉よく知ってたわ」
露天風呂から空を見上げると満点の星空。
「星きれーい。東京にいるの忘れそう」
「田舎に住んでる時はきれいとか思わなかったのに不思議ね」
伏黒も今頃同じ星を見ているだろうか。できれば大好きな彼と一緒に眺めたい。
「…ねぇ鈴、あんた何カップ?」
野薔薇は突然何の脈絡もなく、鈴の胸元を覗き込んだ。
「え、Cかな。でも最近ちょっときつくって……」
女の子でもあまりじろじろ見られるのは恥ずかしい。鈴は片手で胸を隠す仕草をする。湯が乳白色で、あんまり透けてないのが幸いだ。
「やっぱりね。谷間が強調され過ぎて、窮屈そうで品がよくないわ。
ったく、伏黒に揉まれるせいかしら?」
「野薔薇ちゃん!?そんなことされてないから!!」
「あら、まだ清いお付き合いだったのね。
でもあいつ絶対ムッツリだから気をつけなさいよ」
「もぉ…」
☆side男湯
(釘崎…!)
防音もない薄い塀のせいで二人の会話はすべて筒抜けだった。プライバシーなど何もない。
きわどい会話に顔が紅潮し火照りを帯びる。
「すげぇ会話するな、女子って」
「知るかよ…」
女同士の会話を盗み聞きなんて、やめときゃいいのに伏黒も虎杖も塀のそばから動けないでいた。