第12章 君と幸せ
「何やってんだ?」
シロから片目だけ覗かせて伏黒をじっと見ている。何だか機嫌が悪そうだ。
「怒ってるのか?悪かったって、ちょっと体調悪くて。もう治ったから」
「怒ってないもん」
「じゃあシロ離せ」
「…恵、玄関で私に言ったこと覚える?」
「覚えてない」
そう言うと鈴はまた背を向けてしまった。
マジか、一体何言ったんだろう。焦って耳元で名前を囁くがぎゅっと目をつぶって返事はない。
そっと手を回して抱きしめる。
「愛してる。一生」
「…ずるい。バカ」
「一生、鈴と一緒にいたい」
だからこっちを向いてほしいのに、鈴の態度は頑なだった。シロに顔を埋めたままだ。
「酔っ払いの戯言なんて聞こえません」
「酔ってない。知ってるだろ、酔わないって」
「本当?だって…」
やっとシロを少し離して顔だけこっちに向けた彼女の髪を撫で、耳を食んだ。
「やっ…」
「鈴、ちゃんと俺見て」
鈴の体を引き起こすと、ベットボードにもたれた自分の足の間に座らせた。不安そうに翡翠色の瞳が見返してきて、手を取り薬指の指輪をなぞりながら口を開く。
「鈴を一生愛するって誓うよ。だから結婚しよう」
「ほんとに…?」
「本当だよ。何も心配しなくていいから」
禪院家には邪魔させない。
鈴は翡翠色の瞳は涙を潤ませて、こくこくと頷く。両手を広げた伏黒の胸元にぎゅうっと抱きついたのが、彼女の答えだ。
どちらともなくキスをして、抱きしめ合って、ベッドに横になって額をコツンと合わせた。
「私も愛してる。幸せになろうね、恵」
これは確信だ。きっと君となら幸せになれる。