第8章 少女漫画
「恵さー、長続きの秘訣教えてよ」
「はぁ?他の人に聞いてください」
高校生に恋愛相談する大人なんてどうかしている。
「どっちから告白したの?僕さ、告白したことないんだよね」
さすが来る者拒まず。
「恵って、結婚願望ある?僕より早く結婚したらマジへこむんだけど」
うるさい。
「あ、キスするときはもちろん恵からだよね?」
殴りてぇな。
「…五条先生」
「ん?」
「本当に好きな相手なら、去られようとしたら普通追いかけますよ?それができない時点で本気で人を好きになったことないんじゃないですか?」
高専内の共有スペース。夕食の後、鈴は野薔薇とくつろいでいた。
「あ、伏黒くん、五条先生も。おかえりなさい!」
「ただいま。コレ、頼まれてたやつ」
袋から取り出して、鈴に漫画本を渡す。彼女はにこにこ笑って、この顔が見たかったから寄り道せずに帰ったようなもんだ。
「やったー。ありがと。続き気になってたんだ」
「読み終わったら、私に貸してよ」
「野薔薇ちゃん、棘先輩の次でいい?」
「いや、アイツこれ読んでるのかよ…」
「あ、伏黒くんも読まない?」
キラキラした目を向けてきた。仲間に引き入れたいようだ。
「いや、俺はいい」
「私が読む本、あんまり興味ないよね?」
「ほぼ漫画だからな」
自分は活字の方が好きだし。
「ねー鈴、僕にもこの本貸してくれる?」
「いいですよ。明日授業の時、まとめて持っていきますね!」
五条に彼女の笑顔を取られたのが癪に触ったが、この後は一緒に過ごせるから、まあいいかと思えた。