第5章 海水浴
「鈴、こっち」
賑やかな海辺とは逆方向に、屋根とベンチがありひと休みできるスペースがあった。
周囲に人はいない。隣り合ってベンチに座ると、伏黒は切り出した。
「水着、見せて」
「え、ここで!?」
「後で見せるって約束しただろ」
「あれって約束なの?」
野薔薇と買い物に行って、何回も試着してやっと買ったお気に入りの水着。
でもいざ見せろと言われるとちょっと恥ずかしい。
「いい?」
待ちきれない伏黒はファスナーに手をかける。
「や、自分で下ろすから!」
ファスナーを下ろして、ラッシュガードを脱ぐ。白い肌によく映える白いビキニ。大ぶりの腰のリボンが鈴のお気に入りだ。
華奢に見えるだけで意外とスタイルがいいのは知ってる。
「…かわいい」
頬にキスして抱きしめる。首筋や胸元にもキスを落とす。誰にも渡したくない。こんなに独占欲が強かったのかと、鈴と一緒にいると日々実感する。
「伏黒くん、痕が残っちゃう…」
「ラッシュガード着とけばいいだろ」
「水着脱いだ時どうするの!?」
別に見られてもいいとさえ思う。鈴は俺のものだという証だし、と言ったら彼女は怒るだろうと思ってやめた。
タイミングよくスマホが鳴る。野薔薇からだ。
『ちょっと、伏黒!?アンタ達、どこ行ってんのよ?天気があやしくなってきたし、そろそろ帰るって先輩たち言ってるわよ!』
「…今から戻る」
ハァ、とため息を吐きながら通話を切る。正直イチャイチャし足りない。今日は絶対部屋に泊まってもらおうと思い直し、ラッシュガードを着直した鈴と手を繋いだ。
帰りの更衣室にて。
首筋と胸元についた薄いキスマークを真希と野薔薇に散々揶揄われたのはいうまでもない。