第9章 第8話 ― 仲直り ―
仕事帰り、会社を出ると、そこには蓮が立っていた。
「蓮……」
「……急にごめんな」
あの日の気まずさが、まだどこかに残っている。
私たちはしばらく、言葉もなく見つめ合っていた。
やがて、彼がぽつりと口を開く。
「……あの日はごめん。言い過ぎた」
その言葉に、胸の奥が少しだけ揺れる。
「……私の方こそごめん。
でも、本当に何もないのに、あんなふうに言われるのは嫌だったんだ」
少しだけ間があって、彼は小さく頷いた。
「……そうだよな。本当にごめん」
そして、少し迷うようにしてから、
「また……ライブ、来てほしい」
そう続けた。
「うん。また行くね」
そう答えると、自然と力が抜けた。
気づけば、二人で並んで夜の街を歩き出していた。
やっと、蓮と仲直りできた。
また、これまでみたいに話せる。
そのことが嬉しくて、足取りが少しだけ軽くなる。